総合研究大学院大学

    知らない名前ですよね.確かに総合研究大学院大学(略称:総研大/SOKENDAI)は知られていない大学です.それもそのはず,総研大はいわばバーチャル大学です.バーチャル大学と言っても別に夢幻の大学でもなければ,ネットにしか存在しない大学ではありません.立派な国立大学法人(かつても国立大学)であり,実在する大学です.
    しかし,本部キャンパスにはほとんど学生も先生もいません.
    では学生や先生はどこにいるのか.
    実は日本全国にある大学共同利用機関等にいるのです.

    え,大学共同利用機関て何?
    そうですよね.これまた普通には聞いたことない名前です.大学共同利用機関とは大学の中にある研究所やセンターに近いものですが,個々の大学の組織の一部としてあるのではなく,独立した組織で,全国の大学の研究者が共同で利用する仕組みとしてあるものです.
    なんて言ってもピンとこないですよね.でも名前を挙げれば知っているところは結構あると思います.
    国立天文台国立極地研究所国立民族学博物館(民博)国立歴史民俗博物館(歴博),宇宙航空研究開発機構(JAXA, ここは独立行政法人) 等々

    こういった研究所の先生に指導されながら博士研究をするのが総研大の仕組みなのです.

    この中の一つに国立情報学研究所があり,その国立情報学研究所が担当する専攻が 複合科学研究科 情報学専攻 というわけです.

    さてさて,そんな総研大 情報学専攻ですので,やっぱり普通の大学院とは違うところがいろいろあります.その辺を考えて,この専攻のいいところ,悪いところをまとめてみました.まあ,当事者が書いているのでフェアでないのはご承知ください.あくまで参考までというこで.

    総研大 情報学専攻を選ぶ5つの理由

    1. 超少人数教育の大学院である
      一学年10名もいません.一方教授陣は80人ぐらいいます.こんな比率の学校は他 にはないでしょう.先生にもよりますが,指導学生も1,2名ととても少ないです. 講義数も80以上あり,講義あたりの受講者数も数名です.とにかく超少人数教育 のシステムです.これで他の国立大学と同じ学費ですからコストパフォーマンス 的にはすごいものがあります.
    2. 研究所の一員になれる
      大学院は実質的には国立情報学研究所の一部として運営されています.大学院の 学生も研究所の一員として研究所のファシリティやサービスを受けることができ ます.また対外的にも研究所の一員として活動しています.
    3. 都心にある大学院である
      国立情報学研究所は東京の都心,一ツ橋にあり,大学院もこの中にあります.竹 橋(東西線),神保町(都営三田線,都営新宿線)が最寄駅です.理系の大学院 としては近年は珍しく,このため多くの社会人学生がいます.
    4. RA制度が充実している
      社会人学生以外ではほぼ全員リサーチアシスタントとして雇用されます.RAでは 月額10万円程度支払われますので,日本学生支援機構の奨学金などと組み合わさ れればアルバイトなどをせずに研究に専念できます.
    5. 国際的交流ができる
      アジアとヨーロッパを中心に多様な国からの留学生が来ています.また常に海外 からのインターンシップ学生が10名以上滞在して一緒に研究をしています.学生 室では日本人が少ないほどです.このほか,NIIには多様な研究員が訪問・滞在 しており,セミナーを通じて交流が行われています.さらには学生の海外派遣制 度もあり,多くの学生が海外訪問・滞在をしています.

    総研大 情報学専攻を選ばない5つの理由

    1. 大学らしくない
      いわゆる大学のキャンパスに通いたい人に向かないでしょう.環境的に大学らし いところはなにもありません.講義室や休憩室が唯一大学ぽいかな.それ以外は ビルの中に出勤するような感じです.もっとも学生は24時間勝手の時間にきて活 動しているので,研究生活的には他の大学院とかと変わらないと思います.
    2. 研究室がない
      いわゆる理系の研究室の雰囲気を期待すると裏切られるかもしれません. 国立情報学研究所の特徴として教員単位の研究室というものは原則ありません. これは物理的な部屋がないということで,実際の研究は一人あるいは複数の教員 が研究グループによってなされていて,それが普通の理系の大学院における研究 室に相当します.その中では普通の大学院の研究室と同様の運営を行っている先 生もあり,様々です.
    3. 学生扱いされない
      先に述べたように研究所の中では研究所の一員のように扱われますので,学生気 分を続けたい人に向かないでしょう.
    4. 狭い
      都心にあるため,床面積に限りがあります.一般の大学院に比べると机や個人が 使うスペースが若干狭いと思います.もっとも場所が必要な実験などは国立情報 学研究所千葉分館ということろで実施することができます.
    5. 無名である
      これが最大の問題でしょう.研究面では国立情報学研究所はもちろん総合研究大 学院大学も一定の知名度があり,困ることはありません.しかし,一般社会では 総合研究大学院大学はとっても無名です.日本でもっとも無名の国立大学でしょ う.有名な大学にいきたいといういう人は来てはいけませんね.

    どうでしょう.行きたくなりました?それと行きたくなくなりました?

    そうそうもちろん,大学院(博士課程)進学は環境云々よりテーマですよね.もし私の研究グループの研究に興味あったらどうぞコンタクトをとってください. メールでtakeda@nii.ac.jpまでどうぞ.

   
Hideaki Takeda